デイケア学会 おまけ
学会場である金沢歌劇座の向かいに,コンクリートの打ちっぱなしで一見シンプルなのですが,何かとても気になる静謐な佇まいの建物がありました。学会の合間にふらりと覗いてみました。
そこは鈴木大拙館といい,金沢生まれの,禅を世界に広めた仏教哲学者,鈴木大拙の記念館でした。こうした施設には珍しく,展示棟にはほとんど物がありません。展示物に細かい説明もなし。鈴木大拙の思索をそのまま表現することにフォーカスした施設になっていました。自分で考えて感じなさい,とでも言いたげな簡素さです。私のように何も知らずにうっかりふらりと入った人間でも,中を歩いている間に思想を体感できるようなつくりです。
鈴木大拙は「妙」の英語訳に長い間頭を悩ませたそうです。そして,シェークスピア作品「お気に召すまま」の中の一説と出会います。
『O wonderful,Wonderful,
and most wonderful wonderful!
and yet again wonderful』
このセリフと出会い,まさにこれこそ「妙」を表現するのにぴったりだということで,西洋に「妙」の概念が伝わる事となったわけです。
デイケアでは,年代を問わず,バックボーンも様々な多くの方との交流の中から,カウンセリングなど個別のかかわりの中では見られないような不思議な力を感じることがよくあります。それこそ,集団の力,デイケアという場の力なのであると思っていますが,ぴったりした言葉がみつからないなと長年思っていました。これこそ「妙」というのに値するものではないかと,私も一丁前に哲学者になったつもりで,庭の水面に映りこんでいる青い空が波紋でゆれているのを眺めながら閃いた気分になったのでした。この空間のおかげ。金沢のよいおみやげです。
K.M.