大人になるということ
秋めいた季節になりました。
家では飽き足らないちびっこ怪獣を放牧するため,休日にはもっぱら植物園や公園めぐりが習慣となっています。
動くものに惹かれるのでしょうか。
子どもが「こえ!!!(コレ)」と指さす先には,多種多様なあの方々。
そう,虫です。
お尻がとんでもなく長い方,驚くほど光沢のある緑色の方,手足がやけにほっそーい方。
子どもが大声でアピールをするたびに,私の脳内ではバトルが始まります。
子どもの興味関心の種を育ててあげたい親心
VS
できれば極力虫とは交わらずに生きていきたい願望
しかし,思い返せば,昔は私も虫が大好きでした。
カブトムシの幼虫を捕って長期間育てたり,カマキリを手でつかんで共に散歩したり。
「ペットが欲しいからアリを飼う!!!」と虫かごにアリを集めてきたものの,一瞬で隙間から逃げられたこともありました。
アリをペットにしようと思う斬新さよ。
大人になるにつれ虫が少し怖くなりました。
虫に嫌悪感を抱く現象は世界中でみられ,とくに先進国や都市部の住民ほど虫への負の感情が強い,という知見があるそうです。大部分の虫は人間にとって害がないことを考えると,これは不思議な現象ともみなされ,その領域では研究が進んでいます。
虫は人間と姿かたちが違い,どのような動きをし,どのような影響を与えるのか,一見分かりにくいものです。人間は,自分と異質なものに出くわすと,本能的に嫌悪を感じたり危険に備える行動をとったりします。
また,大人になるにつれ,刺されたら危険な虫がいることや,感染症を引き起こす虫が存在することを知識として身につけます。
さらに,「変な感触のものを踏んだと思ったらムカデだった」など,虫に関する不快な体験をしていくこともあるでしょう。
これらの知識や経験から,いつしか虫全体が嫌悪の対象になってしまうようです。(もちろん,大人になっても虫に嫌悪感を持たず,お好きな方もたくさんおられるとは思いますが。)
子どもの頃はどうでしょう。大人と比べて虫への嫌悪は少ない傾向にあるように思います。
虫に対する知識が乏しく,怖さよりも好奇心の方が勝るためであるとも考えられています。
つまり,虫が苦手となってきた理由には,私にも危険に備える力が少し備わってきたからともいえるでしょう。
学習して,危険に備える。大人になったのですね。
一方で,怖いもの知らずであった昔との変化には,少しだけ,切なくもなるのです。
いつからでしょうか。
危険に備えるような,もっともらしい理由をつけて,自由に行動ができなくなったのは。
昔のように,好奇心を持って。
新しい挑戦を,怖がらずに。
生きていきたいな,と,ふと思うこの頃でした。
まずは虫取り網でも手に入れようかな。
F.N.