等倍
『不思議惑星キン・ザ・ザ』は,自分的映画ベスト5には入っています。
6,7年くらい前でしょうか。
スタッフの竹下さんに貸していた,キンザザのDVDを返却してもらった時のことです。
第一声が,2倍速で見たわ,でした。
ゆっくりとした,非生産的なシュールな映画ではあります。一方,わたくしは軽くカルチャーショックをうけたのでした。そうか,そういう手があるのか,と。さほど興味のない映画をおしつけられた末の,合理的なふるまいに,ひとあわふかされた記憶があります。
ニュースで,近年若い世代の間で「映像の倍速視聴」という,視聴方法の変化がみられている,ということを知りました。YouTube,TikTokで映像をよく見る世代には,映画館の2時間,ドラマの1時間は長く感じる,とのこと。
コンテンツ過多の状態の中,チェックしなければならない情報が膨大で,時間がいくらあっても足りない。一方,最新の話題にも取り残されたくはないという,タイムパフォーマンス(時間対効果)を求める状態になっているそうです。
ニュースの中では,
「最近は倍速で映像を見る人が増えているということですが?」
と,渋谷の街頭で10代〜30代を対象にインタビューされている様子が放映されていました。
「基本,2倍速っしょ,常識〜」
「大学のオンライン授業,倍速でみた」
「1.25かな,コスパいいから」
など,次々と答える人が多い中
20代学生の方の言葉にしびれたのでした。
「いやー僕はそれはしないっすね,等倍っすね」
等倍。
なんという新鮮な響きでしょうか。
倍速ではみない,のではなく,等倍。
余計な情報ですが,これは行動療法でいうところの,確率操作ではないですか。
等倍,というひとつの概念がうまれたな,と,またしてもひとあわふかされたのでした。
基本,映画は等倍にしています。
言ってみたいものです。
ある市場調査会社が,2021年3月に,全国の20~60代の男女計1100人に行った調査では,動画を倍速視聴した経験がある人は20代で約半数に上り,60代でも20%台に達した,というデータがありました。
ところで,竹下さんは何年も前から,流れの先をいっていたのだとも同時に思ったのでした。
ひとは,倍速の世界から,何をみて,何を感じるのでしょう。
不思議惑星キンザザ
1.5倍速で一度みてみましょうか。
K.M.